薬局の採用が決まらない本当の理由──求人票と“職場の体験価値”を作り直す

採用

TL;DR(要点)

  1. 求人票は「作業の羅列」から、働くと得られる価値(EVP)を伝える営業文章へ。
  2. 面接より前に、“見学60分”で働く自分を想像できる体験を設計する。
  3. 採用は内定で終わらない。入社90日オンボードまでをひと続きで設計する。

なぜ、応募→採用につながらないのか

  • 求人票が条件一覧で終わる:候補者が“未来の自分像”を描けない。
  • 選考が受け身:問い合わせ待ち、事務的面接、弱いフォロー。
  • 職場の魅力が言語化されていない:EVP(Employee Value Proposition)がない。

5~20店舗規模では「人事部が薄い/ない」ことが多く、仕組みの欠落が歩留まりを下げています。


解決の型:EVP → 求人票 → 見学体験 → 90日オンボード

1) EVPキャンバス(7ブロック×各3点でOK)

※EVP=この薬局で働くと何が得られるかの約束。次の項目を“制度名ではなく体験”で書き出す。

  • パーパス/社会価値:在宅×地域連携/独居高齢者の継続支援 など
  • 成長機会:在宅同行/月2回、学会費補助/年2回、症例共有会/月1回
  • 裁量/役割:担当患者の提案権、改善提案の承認経路、役職登用基準
  • 評価/報酬:行動×成果の二軸、表彰、昇給タイミング
  • 働きやすさ:シフト原則、残業実績、事務集中時間の確保
  • 設備/支援:二次校閲体制、監査機器、電子処方箋/PHR
  • コミュニティ:1on1、メンター制度、他職種カンファ参加

例)「教育充実」→「入社6か月で在宅単独訪問、学会発表まで伴走」


2) 「売れる求人票」の型(骨子コピペOK)

タイトル

  • 在宅×チーム医療で成長する薬局|1on1と学会支援で“地域の専門家”へ

リード(150~200字)

  • 誰の、どんな課題を、どう解決する薬局か。入職後半年~1年の「なりたい姿」を一文で。

仕事内容(H2)

  • 1日の流れで描写(午前:外来/午後:在宅2件/終業前:10分カンファ など)

求める人物像(H2)

  • Must(免許・最低要件)+ Fit(価値観・行動特性)

成長支援/キャリア(H2)

  • 3か月/6か月/1年の到達イメージ+学会・認定支援の具体

働きやすさ/制度(H2)

  • シフト原則、残業実績、休暇の取り方、時短/副業可否

給与・評価(H2)

  • レンジ、評価観点(行動×成果)、昇給時期

選考フロー(H2)

  • 見学→カジュアル面談→一次面接→最終→内定フォロー(各所要時間明記)

応募方法/連絡先(H2)

  • 応募ボタン、返答目安(例:24時間以内)、担当者名

原則:抽象→具体(NG「教育充実」/OK「症例共有会 月1回・演題支援あり」)


3) “見学60分”で「ここで働きたい」をつくる(全店共通台本)

  1. オープニング10分:パーパスと今日のゴール共有
  2. 現場ツアー20分:調剤導線・薬歴チェック・在宅準備を体感
  3. モデル社員対話15分:入社理由/成長実感/1日の流れ
  4. Q&A10分
  5. クロージング5分こちらから面談日程を提案し、次アクションを確定

目的は“情報提供”ではなく、働く自分のイメージ形成

(付録)モデル社員ヒアリング項目

  • 入社の決め手/1日の流れ/成長を実感した瞬間/この薬局ならではの学び/今後の挑戦

4) 面接は“行動事実”で見る(STAR法)

  • 質問例:「患者対応で難しかったケース(S/T/A/Rで)」
  • 評価観点:患者志向/学習志向/協働性/主体性(各5点)
  • 合否は点数+文化適合コメントを必須に。

5) 内定フォローと入社90日オンボード

フォロー:24時間以内に個別メッセージ+先輩との再接点セット。
90日オンボード標準

  • Day1:端末・帳票・メンター確定/1on1を月内予約
  • Week1:在宅同行1回/監査リスク共有/振り返り15分×2
  • Month1:ミニ目標(具体患者のアセスメント改善など)
  • Month3:ふりかえり+次の挑戦合意(学会・症例発表・在宅単独)

「任せる前に設計する」で初期離職を大幅に下げられます。


KPI(毎月の歩留まり管理:店舗別で可視化)

指標定義目安/改善の目線
PV→応募率募集ページ閲覧に対する応募0.8~1.5%(CTAとリード改善)
応募→見学率応募者のうち見学実施55~70%(即返信・所要時間明記)
見学→一次面接率見学者のうち面接進行45~60%(体験の質)
オファー受諾率内定のうち承諾65~80%(比較軸可視化・個別化フォロー)
90日定着率入社90日で在籍90%以上(オンボードの質)

5~20店舗なら、“軽本部(HQ-lite)”でテンプレとSLA(返信30分/日程24時間)を全店運用すると一気に改善します。


今日からできるチェックリスト

  • EVPキャンバス(7ブロック×各3点)を本部で作成
  • 求人票のタイトル&リードをEVPベースで書き直す
  • 見学60分台本を全店配布し、ロールプレイを1回実施
  • 面接質問票(STAR法)と評価表を統一
  • 90日オンボード表(Day1/Week1/Month1/Month3)を店長に配布

まとめ

採用は「募集・面接・内定」のではなく、体験設計という線です。
EVP→求人票→見学体験→90日オンボードを一本化すれば、応募者の質・受諾率・初期定着が同時に上がります。

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